毎日の定期的な読書を再開しようと習慣づける努力をしている。 そういう時に「読書にまつわる本」を読むとモチベーションがあがるケースがある。 僕の場合だと、斉藤孝の「読書力」やアドラーの「本を読む本」が昔そうであった。 最近の本よりなるべく古典的なものがよかったので、今回は加藤周一の「読書術」を読む。
タイトル通りテクニックについて書かれている本ではあるが、 その調子が読書の「方法」ずばりを俗に言う「どや顔」で解説するというよりか、 エッセイ風味であり文章のリズムや「漢字とひらがな、カタカナのバランス」が非常に良く読みやすい。 さくっと1時間ほどで半速読してしまった。
速読術や精読術にも触れているのだが、 ふっと肩の力が抜けるところが『本を読まない「読書術」』という章で印象に残った。 要約すると世の中全ての本、ましては地方の図書館にある蔵書レベルでも全てのものを読むことは不可能であり、 何を読まないか、読まないで読んだようにすることも大事であると述べている。 その方法やコツを具体的に引用を交えながら5個ほど紹介したいと思います。
1. 一冊だけ読む
まず章の冒頭ではこう書かれています。
はやく読もうと、おそく読もうと、どうせ小さな図書館の千分の一を読むことさえ容易ではない。 したがって「本を読まない方法」は「本を読む方法」よりは、はるかに大切かもしれません。
そして、目的を立てて目的のための本を読み、読まないものを決めていけばいい。 百冊の中の本から九十九冊を読まずに一冊だけ読めばいいと。
僕たちの時間は限られていて一日に一冊を読んだとしても、年に356冊しか読めないという計算になります。 ついつい「あれもこれも読んでやるぞ」と意気込みがちですが、 限界があることを考えると力を抜いて「読まない方法」を意識するのも大切だと思いました。
2. 一人の作家だけとつきあう
僕はミーハーと言われるかもしれませんが、高校生の時に村上春樹にはまって、 彼の小説ばかり読んで全ての小説を所有していたりします。 ただ「1Q84」だけはなんとなくまだ読んでません>< 「村上春樹ばかり読んでいていいのかなぁ〜」なんて周りが気になってふと思うこともありますが、 そんなことはないと加藤周一氏は言ってくれました。
近代文学の特徴は作家の個性の表現ですから、 一人の作家の一つの作品をおもしろいと思ったら、その作家の書くものだけを集めて読むというのも、 一法でしょう。
そしてこうした楽しみもあると言います。
もし生きて活動している一人の作家を読みつづけるとすれば、 読者が若いときには作家も若く、読者が年をとるにつれて作家もまた年をとってゆくので、 その作家の発展を自分自身の興味の発展と並べながら、細かくたどることができるというたのしみもあります。
なるほどー。面白いですね。 僕も若い時から読んでいる村上春樹の1Q84を読んでみればそういう楽しみができそうですね。
3. 書評を活用する
実際に本を読まずに、週刊誌の書評を活用して読んだ気になるのもよいと加藤氏は述べます。 ただ、触れられている通り、こと日本には書評を掲載した週刊誌が少ない、もしくは手に入りにくいです。 今でしたらプロのものではありませんが、Amazonのレビュー欄はそこそこ参考になるのではないかなぁとか、 書評Bloggerの記事も参考になると思いましたね。
実際、僕はAmazonを定期的にチェックしていて、ランキングを見て、レビューを見て、 「今こういう本が流行っているのかー」と本を読まずに済ますことは多々あります。それでいいかもしれませんね。
4. 抄録には注意する
書評と共に抄録を読むことも読まない方法の一つであるが、注意が必要と書いてあります。 抄録(しょうろく)という言葉は見たことがあっても、あまり馴染みが無かったので、 調べると「引用」の意味に近いですね。本書はこう述べます。
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抄録の場合には、第一に、何を抄録するかということ、第二には、 それぞれの論文または記事のどの部分を抄録するかということ、その二重の仕事に、 どうしても編集者その人の意見や傾向が現われます。 しかし編集者は、そこでみずから論文を書いているわけではない。いわば、他人の論文の、 または記事の断片を並べることによって、 読者にあたかもそれが論壇の客観的な見取り図であるかのような印象を表現しているということになりがちです。
今まさに「読書術」という本から僕が抄録をしているわけですが、 これもかなり僕の意図が含まれていまして、さらには僕自身が書いたことではなく、 加藤周一さんが書いたものとして扱っています。確かにこれは書き手もそうですが、 読み手も注意しないといけない点です。
5. 話の中から本を知る
人と本の話をして本を知る、それも読まない方法の一つと言います。 その際に相手が自分の読んだことのない本の話をした時も「読んだふりをする」ことで、 相手から話題を引き出し読んだ気になることもできる、らしいです。
たとえば、だれかがこちらの読んだことのない本について話しだしたとしましょう。 そのときはこちらは、間髪を入れず「あれはおもしろい」といいます。 もし、その本を話だした人がおもしろいと思っているとすれば、打てば響くこちらの反応に勇気づけられて、 当然、本の内容をおおいのしゃべり出すはずでしょう。
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いずれにしても、、だれかが一冊の本について話しだすときには、 その人はなにかの興味をその本に持っているはずで、話をひきだすことはそうむずかしいことではありません。
なんかこれはかなりの高度なテクニックな気がしますが(笑)、今度やってみたいと思います。
以上、加藤周一著「読書術」に書かれている『読まない「読書術」』について僕が印象に残ったところをまとめました。 さてもし「読書術」を読んだことが無い人がこの記事を読んでくれたとして、 「読書術」という本を読まずに済ませるか、読んでみるかはもちろんその人の自由であります。