「コンピュータを理解する」、要はコンピュータを含むITと呼ぶような情報技術を学ぶ。 教科書的にいけば、初級シスアドや基本情報技術者の本、はたまた、 もうすこし低レイヤーを学びたければ、 以前にも紹介した「コンピュータの構成と設計」という本を精読するのが常套なやり方である。 本書「あなたはコンピュータを理解していますか? 10年後、20年後まで必ず役立つ根っこの部分がきっちりわかる!」は、こうした教科書的なアプローチとは違う切り口でそれが語られ、口当たりならぬ「読みあたり」の柔らかいものとしてコンピュータを理解することができる良書である。
その一番の特徴は、「たとえ」が非常にうまく、わかりやすいという点だ。 いやむしろ、本書はコンピュータを理解するための「たとえ話集」といっても過言ではない。 この分野に必須キーワードとして出現するが難解で理解しがたい、例えば「エントロピー」や 「有限オートマトン」といった言葉を、「味噌汁の塩分」や「自動販売機と人生ゲーム」といったように表現し、 かわいいイラストつきの解説が入る。 抽象的な概念を身近な具体的なもので説明されると、今まで多少は理解していたキーワードがより鮮明にイメージできるようになり役に立つのである。
あとがきにも、「コンピュータ」を理解してもらいたいという作者の思念を打ち明かした後、こう書かれている。
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たとえ話や比喩が極端に多いのも本書の特徴の1つです。科学や学問とは、「具体化」と「抽象化」の間を、行ったり来たりする知的作業です。 比喩は単に、話をおかしくするものではありません。この具体化と抽象化の間を「行ったり来たり」する訓練に、 とても役立つものなのです。
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この2つのほど良いバランスがとれたとき、あなたをそれを「理解した!」といえるのです。
このあとがきを今先ほど読んで、 やはりそのような思惑でたとえ話が多かったのかと関心しているところである。 そして、自分はコンピュータのことを本書を読む前と比べれば「理解した!」と言えるかもしれないと思う次第だ。 ちなみに、上記した、「コンピュータの構成と設計」は「上巻」のみ読んだだけだが、 いい本であった。本書を読んだのちはこちらの本を読むのもいいだろう。
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