とあるおじさんに薦められて手にした本書。 「ザ・起業物語」というタイトルからよくあるベンチャー企業のサクセスストーリーを想像していたが、 それとは一線を画す、ヒューマンドラマが描かれた良質の自伝ドキュメンタリー。 ゆえに「ザ・起業物語」という主題より副題の「シリコンバレー・アドベンチャー」の方がしっくり来る。 ちなみに原題は "STARTUP: A Silicon Valley Adventure" 。
著者ジェリー・カプランが1987年にペン・コンピュータ(現在で言うPDAの原型)のアイデアを思いつき「GO」という会社を設立し製品化をもくろむが夢破れ、7年後の1994年に他会社に吸収合併されるまでの話。 その間にいろいろなことが起こる。ベンチャーキャピタルとの紆余曲折のやりとり、成長していく会社、開発したプロトタイプの発表、そしてアップルやマイクロソフトといった大企業が忍び寄ってきって…。そこにはビル・ゲイズも登場し、写真刷りのページには彼の若い頃大きなメガネをかけたビルゲイズとジェリー・カプランが並んでいる写真も掲載されている。
「著者ノート」によるとこの本はジェリー・カプランが日々書き続けた日記が元になっているという。 どおりで、描かれているのは会社のことだけではない。ジェリー・カプラン本人のプライベート、とりわけ家族とのエピソードが所々いいタイミングであらわれ、胸を打つ。 こうしたところもひっくるめて、最初から最後まで読むとカプランの成長と心境の変化を感じることができて、そこが一番の見どころだと思う。 さらにはカプランのユーモアあふれる文章と翻訳のうまさも手伝って非常に読み進めやすい本である。 面白かった。薦めてくれたおじさんありがとう。
- ジェリー カプラン Jerry Kaplan 仁平 和夫
- 単行本 / 日経BP出版センター (1995/10)
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- Amazon おすすめ度の平均:
- 展開がドラマチック☆
- ベンチャーの内側を垣間見られる
- 期待をいい意味で裏切る本